心の葉  10枚目

Sへ
 
 
いよいよ卒園ですね
おめでとう!
思いっきり楽しめましたか
入園前、兄が言っていたように、「本気で」
遊び切れましたか

母がただひとつ、願っていたことは
あなたの心がどこまでも自由に
何にも邪魔されず、心の動くまま過ごせることでした
その願いのせいで、嫌な想いや悲しい思いをした
おともだちもきっといたことでしょう
この場を借りてお礼と、お詫びを言わせて下さい
ごめんね そして本当にありがとう 

本当ならあなたは保育園の2歳児クラスを終えて、
年少クラスから入園する予定でした
だけど、3歳を迎える頃から
怒られることが増えてきて、あなたの表情は曇りがち
木のぼりだったり石を投げることだったり…
心が赴くままやってみたいのに、制止されることがつらそうでした
「いつになったら森の風にいけるのか園長に電話して」
何度かせがまれ、ようやく本気だと、
3歳になりたてのあなたが本気なのだと気づき、入園のお願いをしたのでした

森の風に入ったあなたの心は
ぎゅうぎゅうに押し込められていた箱から飛び出し
広がって、どんどん、どんどん大きくなって飛んでいくようでした

遊びのほうが楽しすぎて お弁当に全く手を付けず
帰りの車で食べたことも何度かありましたね
トイレに行くことも惜しく
うんちが富士山のようにお尻の穴に挟み込まれたまま
パンツにくっついて帰ってきたこともありました

「今日は休んでおくわ」
なぜか突然そんなことを言う朝も、母は
あなたの直感を信じてお休みの電話をしましたね
体調が崩れかけていたり、何かゆっくり自分の中で処理したいとき
あなたの心はいつも正直でした

過信していた部分もあったのでしょうか
年長になると、「一番、一番と何でも一番を好むのが気になる」と
先生から教えていただきました
兄と妹の間で我慢をさせすぎていたのだろうか
あなたの声を聞いていなかったのだろうか
あなたの自信をどこかで奪っていたのだろうか
何度も何度も自分に問いました

どうして一番を目指しちゃいけないのかわかりませんでした
家ではいつも一番になれないSに
せめてここでは一番を目指させてあげたかった

答えのでないまま3学期になりましたね

最後のお泊まり保育で、初めて、本気でぶつかってきてくれる
お友達がいてくれました
自分では、怒りと悔しさが先に立ったかもしれませんね
でもぶつかってきてくれたからこそ、
いつも家で兄と戦っているような、
Sの本当の姿が出せたのかもしれませんね
ぶつかり合ってみて、お友達の心も
自分の弱さも、見えたんじゃないかなって思います

今では少しわかるような気がします

一番になりたい気持ちがだめなんじゃなくて
もし一番になれなかったときに、どう思うのか?
一番じゃないと許せないと思うのか
一番じゃなかったよ、と自分の弱さをみんなの前で素直に言えるのか。
どっちが楽しく生きられるだろう?
先生がおっしゃりたかったのはこういうことだったのかな


 仲間になってくれたおひさまさん 本当にありがとう
みんなにかっこいいところしか、なかなか見せられなかったんだね
でもみんなのおかげで、負けちゃった自分でも
「今日は負けて悔しかったよ」って素直に言えるようになったんだと思う。

先生方にも、感謝してもしきれません。
Sの心をどこまでも見つめてくれたこと、本当にありがとうございます。
彼は、強い自分も弱い自分も丸ごと自信を持って、
次のステージへ進んでいくと思います。
そしてきっといつか、他人のことも心から認められる
強い人になれると思います。
ありがとうございました。